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2014.3.10 「おけけが語る」
おけけ

悲しみの声を辿るとそこにはいつも


遠くで悲しみの声が聞こえる。
ふとそう感じる時がある。

その声は始めはかすかなものだが、近づくにつれ大きく、沢山の声に変わって行く。
不思議な事に、そこには喜びの感情も沢山ある。
悲しみ。不安。喜び。期待。諦め。
そんな複数の感情が入り交じる場所がある。

辿り着くと、そこは大抵ペットショップだ。
ブルドッグ
こんなビックリするような顔の犬もいたりする。
しかし、よく見ると愛らしい。

そこには、沢山の人だかりが出来ている。
子連れの家族、恋人達、老人。
あらゆる人達が集まり、小さな檻に入った動物達を見ては楽しそうに見ている。
時々、檻をコツコツと手で叩いたり、餌を食べる動物に歓声を上げたりする。

ダルメシアン
「特別奉仕」
そう書かれた檻には、大きい犬が入っていた。
生後一年近く経つ犬は、引き取り手が見つからずに安く売られるらしい。

ヨークシャーテリア
ひときわ沢山の人だかりのある檻の前には、小さい犬が弱々しく震えている。
つぶらな目はキラキラと輝き、今自分の置かれている状況に対する不安、そして期待が入り交じったような表情をしている。

猫

そして、俺にとって厄介な猫もいる。
俺は、人からも犬からも気付かれずに行動する事が可能だ。特別な訓練を積んで来たからだ。
しかし、猫だけはいち早く俺に気付き、襲いかかって来る。

だが、ここにいる猫は俺に気付くも、手を出せない事を心得ている。
そしてじっと耐えている。

 
一見平和なここ、ペットショップ。
だが、俺にとってこの場所程カオスを感じる場所はない。

檻の中は悲しみや怒り、失望や期待。真っすぐに届いて来る痛々しい感情。
一方、檻の外では喜び、愛情といった感情、そして渦巻く欲望。

俺はここに来る度に混乱するのだ。
ここには何か正しくない事が含まれている。

俺は妖怪だがこれくらいはわかる。
逆の立場で考えてみる。それは少しの想像力があればわかるはずだ。

“おけけ”と“砂かけばばあ”を掛け合わせて、新しい妖怪を作ったら面白い妖怪が出来そうだ。そう思った誰かが俺と“砂かけばばあ”を捕らえる。
そして交配をさせる。そうして掛け合わせて産まれた妖怪の子供。
「正真正銘の血統書付きです。御飯はあまり食べなくても育ちます。」
そんな文言とともに売り出される。

砂かけおけけ

俺はそんな時には必ず、その場にいる全員の衣服に毛を付けるんだ。
※おけけの毛は、毛根から離れて暫く経つと陰毛のようにカールします。

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